産学連携 共同研究先の紹介 大阪医科薬科大学
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機関のご紹介
代表者からのメッセージ
提携の経緯
3年ほど前、古くから付き合いのある研究仲間の1人から、森田薬品工業さんをご紹介いただきました。森田薬品工業さんがBNCT「ホウ素中性子捕捉療法(boron neutron capture therapy)」の研究を本格的に行っているということから、私がBNCT研究の専門家として、俯瞰的・総合的にアドバイスができる相談役と言いますか、あえて言うならばアドバイザー的な役割をさせていただいております。
現在の取り組み
標準治療が困難な再発・進行頭頚部がん治療に対するBNCTの臨床を行っています。早期のがんでしたら、手術で摘出してすぐ済むこともありますが、進行してしまうと放射線と抗がん剤の併用で治療しても、OS(全生存期間)中に35%ぐらいが再発したり転移したりすると言われています。そうなると選択肢が狭まり、手を尽くすのが難しくなります。そこでBNCTに回ってくるので、頭頚部の再発、進行がん等の臨床がいちばん多くなっています。
また、脳外科の先生が主体で悪性度の高い髄膜種の再発に対する治験も行っています。まだ未承認ではありますが、FBPA-PET検査(核医学検査)の登場により新規に適応拡大したものです。既に照射は終わっていますので、現在観察段階に入っているところです。
最近は、物理的な機器そのものを本格的に変更するのではなく、加速器から取り出したビームをうまく調整することで、治療できる腫瘍の深さを変える試みを行っています。これはある意味薬よりも簡単ですので、認可もされやすいと言えるでしょう。これから数年の間に確実に進んでいく研究だと思います。
今後の展望
基本的にはBNCTは薬剤開発にかかっています。現在では安全性を含め、いろいろな意味で「ホウ素薬剤BPA(p-boronophenylalanine)」を超えるものがないのが現状です。効果は患部の深浅やホウ素の集積度に影響されますが、BPAが3.5倍くらいとすると、これが総合的に5倍、10倍に相当する効果で濃度差がつくようになれば、薬剤開発の追い風となり、さまざまながんの治療が行えるようになります。
将来は、腫瘍への選択的集積が確認された患者さんに新規のホウ素剤を投与し、患部に照射することになるでしょう。そのようなより優れたホウ素剤の開発は薬剤分野の研究者や化学者の意欲と情熱にかかっています。
30年ほど前に始まったBNCTの研究ですが、当時に比べたら今は研究者の数も10倍くらいに増えています。がん治療の更なる進歩のためには、BNCTの専門知識、技術を持つ人材教育が必要不可欠です。私たちは若い人材の育成にも力を入れていきたいと考えています。