産学連携 共同研究先の紹介 福山大学
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機関のご紹介
代表者からのメッセージ
提携の経緯
患者さまの身体的負担が少ないがん治療法として注目を浴びている「BNCT(ホウ素中性子捕捉療法 Boron Neutron Capture Therapy)」の研究を行う中で、大学院生の頃から毎年BNCT関連の学会に参加していました。
2016年、福山大学着任後の日本中性子捕捉療法学会にて、新潟薬科大学 (当時)の堀均先生からお声がけがあり、森田薬品工業さんをご紹介いただきました。その頃、いくつか進めていきたいアイデアや新規候補薬剤があったので、共同研究をさせていただく運びになりました。
現在の取り組み
BNCTではホウ素を人体に投与するわけですが、そのホウ素薬剤の開発を森田薬品工業さんといっしょに様々なアプローチで行っています。
例えば、ホウ素を腫瘍特異的に送達できるような薬剤の開発を行っています。これは、多量のホウ素を腫瘍のみに集積させることで、BNCTの治療効果向上を狙いとしています。
また、現状唯一の臨床用ホウ素薬剤「ボロノフェニルアラニン(BPA)」を使い勝手のよい薬に生まれ変わらせる研究を行っています。特にBNCTの治療費総額は約400~500万円とかなり高額です。1000万円を超えるとされるがん免疫療法薬「オプジーボ」ほどではありませんが、患者さまの金銭的負担は小さくありません。BPAを患者さまに安価に提供可能にするこの研究は社会のニーズに応えるものと考えています。
今後の展望
現在承認されているBNCT用薬剤は「ステボロニン®(BPA)」1剤のみです。溶解度がとても低いので投与容量が多く、さらに体外へと排出されやすいため、短時間で投与を終わらせる必要があります。添付文書には、「成人には1時間あたり200mg/kgの速度で2時間点滴静注する。その後、病巣部位への中性子線の照射を開始し、照射中は1時間あたり100mg/kgの速度で1時間点滴静注する。」と記載されています。つまり、平均的な成人男性(体重64kg)に換算すると、500ミリリットルのペットボトル2本分以上の薬をたった3時間で血液中に入れ終わらなければならず、患者さまの身体的負担はかなりのものです。
今後、森田薬品工業さんといっしょにBPAの溶解度を向上させるような薬剤も開発していく予定です。例えば、BPAの溶解度が10倍になれば、1リットルの薬が100ミリリットルになって点滴もすぐ終わるようになり、治療効果が向上するとともに患者さまの身体的負担を大幅に軽減できます。
また、先に述べた様々なホウ素薬剤を世に送り出すことにより、将来的には他のがん治療法のように、BNCTも患者さまの状態に合わせた適切なホウ素薬剤の選択が可能になって欲しいと思っています。
まずは、森田薬品工業さんといっしょに特許取得した3つの薬剤の開発をいっそう進め、いち早く臨床応用へ繋げたいと考えています。さらに今後もいろいろな方面から研究、開発を進めていきます。